ISMとは、2001年8月、少人数からなる平和活動家の団体がパレスチナで創始した「国際連帯運動」のことをいう。ISMの根幹をなす信条は、非暴力直接行動、集団行動、パレスチナ人主導である。ISMは、この信条を基盤としてパレスチナにおけるイスラエルの占領終結を求めるパレスチナ人主導の運動であり、パレスチナ各地でパレスチナ人が主導する非暴力を手段とした占領に対する抵抗運動を支援し強化することを目指している。ISMが支援する抵抗運動は、非暴力を手段としていることが前提にあるため、いかなる個人あるいは組織が展開する軍事的な抵抗運動も含まない。
また、ISMは、その名称が示すとおり、パレスチナ人と国際人(internationals:パレスチナ人以外の外国籍保持者)の活動家およびボランティアの連帯で成り立っており、単一の組織体というよりは、ISMの信条に賛同することで参加可能となるあらゆる個人および団体からなる集団による運動である。
国際人はISMに参加する際、具体的な活動に入る前に2日間に亘る特別訓練を受ける必要がある。この訓練では、ISMの目的および規律、非暴力直接行動の方法、具体的な活動内容、パレスチナ文化、また現在パレスチナ人が直面している諸問題などについて、ISMの活動家から指導を受ける。
ISMの活動は、パレスチナ自治区の主要都市で実施されており、海外支部も設立されている。ISMは、主に以下の3つの活動を通してパレスチナ人の抵抗運動を支援している。
(1) 【直接行動】
チェックポイントおよび夜間外出禁止令への抗議;「分離壁」建設に対する抗議;家屋や農場を破壊する戦車やブルドーザーなどの町や村への侵入阻止;非暴力のデモンストレーションへの参加。
(2) 【非常事態における動員】
救急車がチェックポイントを通過する際の付き添い;夜間外出禁止令が課されている家庭への食料や水の配付。
(3) 【文書による訴え】
イスラエルの占領下におけるパレスチナ人の日常生活について、またイスラエル軍によるパレスチナ人に対する無数の人権侵害および国際法違反についての、現地および国際情報機関への伝達。
このように、ISMの活動は多岐に亘っており、各々がパレスチナ人によるイスラエルの占領に対する日々の抵抗運動である。
ISMは、運動において国際人の参加を重要視しているが、それは以下の理由による。
(1) 【安全の確保】
国際人が運動に参加することで、イスラエル軍は容易に運動を武力で鎮圧することができなくなり、パレスチナ人の安全をある程度確保することができる。
(2) 【情報機関への伝達】
パレスチナ人と行動を共にすることで見えてくる、占領下におけるパレスチナ人の日常生活の実態を、自国の情報機関に知らせ広めることができる。
(3) 【孤立の防止】
国際人がパレスチナに入り、占領によって移動が制限されているパレスチナ人との接触を継続することは、パレスチナ人の孤立を防ぐことに繋がる。
このように、ISMは、占領終結に向けたその活動において、国際人がパレスチナ内外で果たし得る役割は大きいと考えている。しかしながら、パレスチナにおいては、非暴力の運動といえども、パレスチナ人はもとより国際人も常に危険に晒されている。そのことは、レイチェル・コリーの事件に明白に示されている。ISMが発表した「レイチェル・コリー殺害に関するISMの声明」から紹介する。
レイチェル・コリー(23、アメリカ国籍)は、2003年3月16日の日曜日、ISMの活動の一環として、ガザ地区のラファでパレスチナ人の家がイスラエル軍によって破壊されるのを阻止するために、他の活動家と共に奮闘していたところ、イスラエル軍が操縦するブルドーザー(アメリカ製のキャタピラーD9)によって轢き殺された。イスラエル政府は、レイチェルの死は「不測の出来事」であったと主張したが、事件当時に現場にいた他のISM活動家の目撃証言や、事件前後に撮影された写真から、ブルドーザーの操縦者はレイチェルらの存在に気付いていたことが明らかとなっている。つまり、レイチェルは故意に轢き殺されたということである。
このように、ISMで非暴力を手段としてイスラエルの占領に抗議する国際人も、イスラエル軍による鎮圧の対象となる。パレスチナ人が占領下でどのような状況に置かれているかは、この事件からも想像に難くない。
・参照ウェブサイト
ISM(International Solidarity Movement)(英語)
http://www.palsolidarity.org/
(文:鶴田真二)
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